1774年の初夏。
「貴女は花が好きだという。私は貴女にブーケを贈ることができます」
そう言ってルイ16世がマリー=アントワネットに贈ったのは、531個のダイアモンドで装飾された美しい鍵です。
この時、プティ・トリアノンはアントワネットのものになりました。
ヴェルサイユでは「国王の名の下に」下される命令は、この小さな美しい城では「王妃の名の下に」下されるようになります。
気の置けない友人と過ごし、好きな劇を演じ、音楽を楽しみ、夢の村里を散歩するアントワネット。
愛する子供たちを抱く喜び。
格式張ったローブ・ア・ラ・フランセーズではなく、ローブ・ア・ラ・レーヌと呼ばれた簡素なドレスに身を包み、麦藁帽子を被ったアントワネットは、この場所でフランス王妃から一人の女性に戻れたのです。
1789年10月5日。
「王妃様、急いで宮殿にお戻りください」と小姓の呼ぶ声に、ヴェルサイユ宮殿に駆け戻ったアントワネットは、その日がプティ・トリアノンとの永遠の別れになるとは知りませんでした。
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